涙のクリスマス-クリスマスイベント中の妄想- 鉱山の町ハノブ。 「昔はよかった・・・」思わず声に出して呟き、吐き出した白い息を目で追う。 今日はクリスマス。 「ガキじゃあるまいし、オレには関係ねぇ」 もはや自分に言い聞かせているだけ・・・わかっちゃいるが認めたくはない。 ほんの数年前。 ほぼ24時間と言っても過言ではないくらい、彼の周りにはいつも客がいた。 町外れに立って、自分の夢を語りながら商売をする彼の元には 大陸中から人が集まり、先を争うように彼の売っている物を買っていった。 確かに最近、客の数は減っていた。 が、1日中人がこないなんてことはなかった。 なのに・・・ここ数日ときたら! どこかの世界で100年に1度の不況と騒いでいるのが 冬空の下、風を避けるものもないような場所で商売をしている彼にも 骨身に染みてくるこの閑古鳥常時在住状態。 「さみぃなぁ・・・・」溜息も凍りそうだ。 ほんの数メートル先にはたくさんの人々が集い、 エンチャで暖まりながら談笑し、何かに向かい走り寄ってはまた集まっている。 時折吹き付ける北風に巻き上げられ、彼の足元にころがっているのは ビリビリに破られた包装紙とリボン。 その量ときたら半端ではない。 もう3日もこんな状態で、 彼の店には誰もこない。 「羽・・・いらねぇw」 「POT小よりいいじゃねぇか」 「帰還石ってどうよ!!」 不満げな言葉ではあるが何やら楽しげなそんな会話が 彼の耳にも否が応でも聞こえてくる。 更に、町中に響き渡るあの叫び!!! ”鉱山町ハノブのクリスマスは、この私に任せなさい~。” 「また、エンチャ文書かよw」 「おれもだ・・・orz」 ”骸骨サンタの野郎・・・覚えてろよ!” 寒さのせいで・・・誰がなんと言おうと寒さのせいで 滲んできた涙と鼻水を袖で拭い、ジムモリは拳を握り締めた。 「オレの商品、ただで配りまくりやがってぇぇぇええええ!!!商売にならねぇぇぇええええええ!!!!!!!」 その叫びに合わせるかのように足元で乱舞する包装紙とリボン。 ”オレの気持ち、本当にわかってくれるのはワンコのGさんだけだろうな・・・” もはや、とめどなく流れる涙を拭うことも忘れ、 実は25日夜にはワンコのG様は露店を再開なさっていらしたことは知らず、 足元の包装紙とリボンを蹴り続けるジムモリであった。 - 完 - |